2010年09月03日

父親模倣は強力なアズ・イフ・メソッド その6―7

先回の「尊敬する人への一体化」の続きです。
 芸術家の自己形成の多くは、父親模倣、父親拘束からです。
より高級で精神的な種類の父親代用物への模倣となることが多いのです。小説家のトーマス・マンは、ゲーテを精神的・魂的父親としました。ピカソはややグロテスクな形ではありますが、先輩画家であるベラスケスやアングルなどを模倣しました。まるで剽窃と非難されかねないくらいにです。

 歴史的な英雄もそうです。ナポレオンはアレキサンドロスを模倣し、神話的自己同一化を意識的にやってのけました。

 自己形成とは一度生きられた生を、新しい環境状況でもう一回生き直すことに他なりません。
 それは現代的表現を使えばモデルを巧みに使って、再現して生きることつまりモデリングなのです。
 キリストの生涯は「誌されたがごとく満たされるべき」生涯でした。彼は一見悲劇的な最後を遂げましたが、十字架にかかるとは復活の神話を成就させるためだったのです。それはすでにシナリオが出来上がった救世主を、そのまま忠実になぞることだったのです。
 ですから、彼がそれを選択した以上、逃げられない予定された生涯の在り方だったのです。

 それほど父親模倣は自己規制をもつものであり、拘束を持つものです。
しかし、間違ってもらっては困るのは、いやいやながら拘束されるのではありません。愛情をもって父親模倣をする限り、その結末が悲劇であってもそこに飛び込むのです。

 「わたしは、それだ」ということは、目的を持つことであり、モデルを持つことです。父親とりわけ精神的・魂的父親を持つことであり、「それ」に深く憧れ、愛を注ぐことです。
 
 人生危機の岐路において、先生や父親に尋ねて真似るとしても、それがテクニック的なものや表層的なものに止まるかぎり、その効果は常識的なものでしかないでしょう。
 しかし、本当に愛情をもって憧れる父親模倣であれば、それはより効果的で高度なものになるでしょう。
 人間形成や自己開発にとって重要なものは、真に愛情をもって父親模倣(モデリング)をやることなのです。単なる功利主義では駄目です。

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